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コードもサーバも、雲の上

子育てありきのエンジニア業

日の出とともに起きるエンジニア

この春で意図的に自分のライフスタイルをそれまでの「渋谷で月曜から飲んじゃうぜ!」パターンから完全に変えてから2年半が経ちます。現在自分は朝8時半に出勤、午後3時半〜4時くらいに退勤、あとは午後7時〜8時頃にまたオンラインになり家から必要な事を行う…という基本スケジュールをとっています。ステレオタイプなエンジニア象では夜中遅く暗い部屋でハックしているイメージがありますが、現在の自分は日の出とともに起き午後11時すぎには寝てしまう生活をしているエンジニアなのです。

幸いな事にプログラマー・エンジニアという仕事は周りの理解さえあれば伝統的なサラリーマンのステレオタイプから見たら明らかに異常なスケジュールでも特に生産性を落とさずに仕事を続けることができると仕事ですので、これを最大限利用させてもらっています。

自分は子育てのために意図的にこのような形を取っており、転職等の際にはこの少しおかしな勤怠条件は「あればなおよい条件」ではなく「なくてはならない条件」に入れて希望を伝えています。

「毎日父親でいられるための時間を確保させてもらえる」というのは現在の自分の人生においてとても重要な事なのです。

そもそもの理由

正直この生活をキープするのは公私ともにそれなりに大変です。好きでやっているので自分は文句はありませんが、他人にこの生活の事を説明すると比較的多くの方が「なんでそんな苦行を…?」のような顔をしてしまうのでやはりそもそもなんでそんなチョイスをしているのか説明しないとわからない事なのでしょう。そこでまず自分の場合の理由を説明してみます。

自分には9歳年下の妹がいます。彼女の幼児期はさすがに自分も子供だったので「親の育児を手伝った」というような事はあまりなかったのですが、子供なりにできることをしていたので赤ん坊というエイリアンのような存在から始まりその後彼女がそのエイリアンから人間に成長していく様を近くで見ることができました。自分が大人になったときにそこから自分なりに得た感触は「子供が本当に子供でいられる時間はものすごく短い」ということでした。

幼稚園等に行き始め成長していく妹はまだまだ両親と僕の「かわいいベイビー」的な存在でしたが、小学校に入ってしまってからはどんどんと一人の「人間」として成長していき、気づいた時にはすでに大人に片足を突っ込んだ状態でした。それは大変喜ばしいことなのですが、2歳や3歳だった頃のあの濃密な関係は一瞬目を離した隙にどこかに消えてしまっていたのもまた事実でした。

そのことについては長く考えもしなかったのですが、時が経ち結婚をして長男が産まれた際「自分の子供達が5歳か6歳かくらいになるまでは可能な限り多くの時間を父親として割こう」と決めました。そこから先でいきなり父親業を廃業するわけではありませんが、少なくともそこまでは常に、毎日、彼らの生活の一部でありえるようにする努力をしようと決めたのです。全てはそこから始まりました。

子育てエンジニアの一例

妻の妊娠以前に話し合ってわかっていた最重要事項の一つとして妻は専業主婦をやるつもりは毛頭なく、自分もまた基本的に妻がやりたいと思う範囲でなんらかの仕事をしていて欲しいという事がありました。つまり家の外と中での分業制のようなものは最初からチョイスとしてありえませんでした。

自分が妻の妊娠を知ったのは妻が妊娠2ヶ月頃の事です。約8ヶ月後に長男に出会うまでに妻と生活をどういう形に変えていくか色々話し合いました。その結果いわゆる一般事務職業をしている妻よりWeb系のエンジニア業をしている自分のほうが明らかにイレギュラーな勤務時間が可能なはずだったという理由で基本自分が保育園等への送迎を全て引き受ける事にしました。もちろん、そうは言ってもミーティング等に出なくてはいけないこともありますので交代は比較的頻繁にありますが、基本何もなければ自分が送迎を行う、ということです。

長男が産まれた当時勤務していた会社ではありがたい事に裁量労働の権利をいただいていたので、その直後からすでに周囲に「自分は5時には会社にいないとおもってくれ。緊急事態の場合はTwitter、Facebook、LINEで連絡さえくれれば可能な限りすぐ対応する」という事を周知しはじめ、実行していました。保育園にも通ってない時点で早めに帰宅していたのは沐浴等を行うためです。保育園に行き始めるある日突然父親面をされても子供のほうが納得いかないでしょうから最初からがっつり面倒を見る事にしていたのです。

紆余曲折ありましたが、長男が保育園に通うようになったのは彼が9ヶ月の頃からでした。諸事情により子供の登園は午前8時過ぎ、退園は午後4時前後ということになりました。当初登園はエルゴを使い徒歩でした。最初のうちはまだよかったのですが陽気がよくなってくるのと彼の体重が10kgを超え始めたのが同時期だったのでそのうちこれが苦行になってきましたので、ベビーカーに切り替えました。そしてまだあたふたしているうちに次男が産まれたので急ぎ自転車を購入し一人で二人運べるようにしました。現在は朝は自転車で子供と妻と一緒に登園してその後それぞれ出社、帰りは自分が二人の子供を自転車に乗せて帰宅というスタイルです。

そのような感じで彼らを連れて帰り、5時頃にお風呂に入れて、妻が作ってくれた夕食を子供達に食べさせ、7時前に次男を、本を読み聞かせしたあと8時前までに長男を寝かせて自分の子育ては一通り終わります。

これを毎日繰り返し、2年半がすぎたわけです。

アウトプットの変化

本当は大きな声で「何も変わらない!」と言いたいところですが、さすがに何もかも…というわけにはいきません。

コンピューターに向かっている時間は減りました。影響が一番大きいのは夜の時間帯や週末に行われる事が多い勉強会の類いにはほとんど足を運べなくなったことです。その代わりと言ってはなんですが、勉強会があるという情報はそれまでどおりに追うようにしています。それらの情報を読み、わからない単語や技術はさらっとだけでも一次文献を読むようにしています。

趣味のコードを含め、様々なアウトプットに関しては正直に言ってあまり変化はありません。他の偉大な先輩子持ちプログラマーの人達にも言われましたが「やれる時に一気に書く・やる」というスタイルを取ることによって結果的には同じくらいの事ができていると考えています。

自分が自分のためだけに使える時間は大幅に減りました。でもそれは無駄にしていた時間が減り、主観的な時間は濃密になり、少ない時間でより多くの処理しているということの裏返しでしかありません。時間には追われていますが、必要な事は全て今まで通りできていますので公私ともに生活の質が落ちたようなことはありません。

最後に

こういうライフスタイルは自ら勝ち取るものであるという思いはありますが同時にこれらの事は雇用者を含め周囲の理解も当然必要です。HDEは大変理解のある会社ですが、制度的には改革の途中です。自分はこの会社のこれからのワークライフバランスの枠組みがどこまで押し広げられるのかを自らの生活を持って推し進めていくつもりです。

子育てを積極的に行う事が重荷でない、というつもりは全くありません。望まない人もいるでしょうし、現実的に不可能な方もたくさんいるでしょう。ですが可能でもあり望んでもいるのに尻込みしている同業者の方がいればあくまで一例としてこのような形も可能であるということを伝えられれば嬉しいです。